witten by 嶋田智之
世界中
うんうんする
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僕の家にはテレビがない。

貧しいから? いやいやいやいや、テレビぐらいその気になったら買えるってば。ちっちゃいヤツ。……だから、そーゆーわけじゃなくて、全くといっていいくらい見ないのだ。以前には僕の家にもちゃーんとテレビがあったのだけど(……ちっちゃいヤツね)、ある日いきなり、スイッチを入れないどころか2年もコンセントを差し込んでないままだったことに気がついて、友達にあげちゃった。以来、年末年始におふくろの家に疎開したときに見る“紅白歌合戦”と“箱根駅伝”だけが、数少ない僕のレギュラー視聴番組となっている。

が、それでもやっぱりF1グランプリとMOTO GPだけは観戦したいわけだ。だけど、それにもテレビが必要になったりはしない。どちらもWEB経由で生放送やオンデマンド放送を楽しむことができちゃうからだ。むしろパソコンだけじゃなくてiPadやiPhoneなどのタブレット端末やスマホでも観戦できちゃうから、出張が多い僕にはかなり都合がいい。ホテルの部屋でWi-Fiの電波を拾えればしめたもの、だ。

MOTO GPについては、MOTO GPのオフィシャルサイトで年間を通して視聴できる“VIDEOPASS”に加入してる。年間料金がいくらだったか覚えてないが、1ヶ月あたり1000円台だったはずで、それでライヴ中継どころか1992年以降のレースなど40000本オーバーのアーカイヴ映像が全て見られるのだから、ちっとも高くないと思う。

F1グランプリはどうかといえば、以前はフジテレビNEXT smartというのを喜んで利用してたのだけど、シーズン開幕直前まで引っ張るだけ引っ張って月額料金を徴収しておきながら、ある日いきなりWEBだけでの有料配信はヤメるからまずは“スカパー!”だとか“J:COM”だとかに加入してナンチャラ……という継続視聴者を平然とコケにするようなことをしてくれたので、バカバカしくなって速攻で解約した。僕がフジテレビ系列の有料放送に加入することは、金輪際ないだろうと思う。

で、今はどうしてるのかといえば、2016年の夏頃からスタートした“DAZN”というヤツに加入している。「ダズン」でも「ダズーン」でもなく、なんでそうなるのかは解らないが、「ダ・ゾーン」と読むらしい。

これは月額1750円+税のスポーツ専門のライヴ&オンデマンド放送で、サッカー、バレーボール、ラグビー、バスケットボール、アメリカンフットボール、アイスホッケー、格闘技、ダーツ、野球、テニス、ゴルフ、水泳、キックボクシング、フィッシング、馬術、バトミントン、スカッシュ、馬車競技、卓球、ビリヤード、そしてモータースポーツを視聴することができる。サッカー好きの人は知ってるかも知れないけれど、何やら2017年からはJリーグの中継を独占配信するらしい。

当然ながら僕はF1グランプリの予選や決勝を生中継で観戦したり、ナマの時間帯に見られないときには見逃し配信で楽しんだりするために加入したわけだが、このDAZN、実はGP2やGP3、ポルシェ・スーパー・カップ、それにオーストラリア・スーパーカー・チャンピオンシップといった「ウソでしょ?」なコンテンツも、実は持っていたのだ。バイクの方も、スタジアム形式のAMAスーパークロス選手権やスピードウェイ世界選手権など、めちゃめちゃマニアックだ。

実はここ数ヶ月、このDAZNのモータースポーツ・コンテンツの中で、もしかしたらF1グランプリより楽しんじゃってるかもしれないモノがある。

FIA世界ラリークロス選手権、である。

ラリークロス、御存知だろうか? 簡単にいってしまえば、ターマック(舗装路)とグラベル(未舗装路)が混在するショート・サーキットを使って行われる、超スプリント・レースだ。日本ではあまり知られていなかったが、1970年代からヨーロッパを中心に開催されているそれなりの歴史を持つ競技で、2014年からはFIAによる世界タイトルのかかったトップ・カテゴリーへと格上げされている。

もうちょっと詳しく説明すると、コースは1周1kmから1.5km程度。予選は最大5台がレース形式で同時に走るタイムアタックで、周回数は4周。Q1は任意で出走が決められるけれど、Q2からQ4までは前の走行のタイム順でそれぞれ走行グループが決まり、遅いグループからタイムアタック・レースが行われる。で、参加者のそれぞれにはQ1からQ4まで速さの順に応じた規定のポイントが与えられ、Q4終了後のポイントの合算で上位12台がセミ・ファイナルに進出できる。またこの時点で16位まで規定に応じたチャンピオンシップ・ポイントが与えられる。

セミ・ファイナルに出場する12台のマシンは予選順で6台ずつの偶数チームと奇数チームに分けられ、今度はタイムではなく6周の超スプリント・レースでゴールした順位で勝負を争う。そして、それぞれのグループ上位の3台ずつが同じく6周で行われるファイナル・レースに出場できる、というわけだ。もちろんセミ・ファイナルでもファイナルでも、規定に応じたチャンピオンシップ・ポイントが与えられ、その合算でシリーズ・チャンピオンが決まる。

こんなふうにウダウダ書くと「ワケ解らん!」かも知れないけれど、まぁちょっと複雑な感じのトーナメント戦で勝者が決まる、というぐらいに思ってもらえればいいんじゃないかと思う。

で、オモシロイのはコースに関するルールだ。“1周1kmから1.5km程度のターマックとグラベルが混在するショート・サーキット”と記したけれど、コースには仕掛けがある。途中から枝分かれして遠回りもしくは近回りするためのルートが用意されるのだ。選手達はその区間を、各レースごとに必ず1回通過しなければならない。これは“ジョーカー・ラップ”と呼ばれていて、ジョーカーを経由することで遠回りの場合には何秒間かタイムロスするわけだが、通過しなければ+30秒のペナルティを喰らわされる。勝負権を失うも同然、なのである。

それをいったい何周目に、どのタイミングで消化するのか。ダンゴ状態から抜け出して前方がクリアな状態で走るために早めに消化を決めるか、後ろを引き離してから余裕で通過するか。戦略は無数にあって、ここが勝負を決める鍵になることも少なくない。

肝心のマシンはというと、最高峰の“スーパーカー”クラスは1.3tの車重に600ps、4WD化もOKで、0-100km/hは2秒たらず。プジョー208やDS3、フォード・フィエスタ、アウディS1、VWポロといった街中で見掛けるクルマ達をいかつくしたようにしか見えないけれど、中身は事実上のワークスが威信をかけて作り上げたモンスターである。

しかも、だ。

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スーパーカー・クラスのドライバーの顔ぶれが凄い! さすがは世界タイトルがかかってるだけある。世界ラリー選手権のチャンピオン経験者、ペター・ソルベルグやセバスチャン・ローブ、DTMのチャンピオン経験者、マティアス・エクストロームやティモ・シャイダー、それにジムカーナ&ラリーを経て世界中がドリフト・コントロールとエンターテインメント性でナンバー1と認めるケン・ブロックといった他のカテゴリーの一流どころと、ティミー・ハンセンやアンドレアス・バックラッド、トーマス・ヘイッキネンといった若い頃からラリークロスでウデを磨いてきた名手達のバトル。 

 

だから!


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フツーのサーキット・レースでは3ワイドだって驚きなのに、こんなふうな5ワイドなんて当たり前。
 

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コーナーの侵入ではテール・トゥ・ノーズなんて生易しいもんじゃなくて、ほとんど全車カタマリ状態。

 

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この次の瞬間にどうなるかは想像どおりで、もちろん接触上等。
 

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ジョーカーその他でクルマがバラけてきても、ドリフトしながらコンコンと接触し合ったり。

 

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前のクルマがドリフトで進路を塞げば後ろのクルマはドリフトしながらライン取りを変えて抜こうとしたり。

 

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単独走行になればタイムを削るためのこんなふうな名人芸を見ることができたり。


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たまにはこんな状態になっちゃうこともあったりして。

 
こりゃもうホント、レーシングカーを使って行われる総合格闘技みたいなもの。ルールを知らないまま見てても、思い切り興奮できちゃうと思う。……解ればなおさら楽しいけどね。

そんなわけで、もちろん他のモータースポーツもめちゃめちゃ楽しいのだけど、2017年は絶対にっ! 世界ラリークロス選手権に注目することをオススメしておきたい。

シーズンの開幕はもうちょっと先で、暫定だけど4月1-2日のバルセロナ戦から。11月までの間に全12戦でチャンピオンシップが争われる。

おそらく引き続き“DAZN”で放映されることになるだろうから、個人的には(F1もGP2も見られるわけでもあるし)有料会員になって予選からファイナルまで楽しむのがいいと思う。
 

◎DAZN
https://www.dazn.com/ja-JP/home

まぁその前に映像を見てどんなものかチェックしたいという人も多いだろうから、世界ラリークロス選手権のオフィシャル・サイトやFacebookページをクリックしまくって御覧いただくといいだろう。

◎FIA世界ラリークロス選手権オフィシャル・サイト
http://www.fiaworldrallycross.com

◎FIA世界ラリークロス選手権オフィシャルFacebookページ
https://www.facebook.com/fiaworldrallycross/?pnref=story

ってなわけで、2017年もあまり役には立たないような気もするコラムをスーパー・マイペースでポロリポロリとやっていくつもりなので、どうか呆れ果てたりしないでオツキアイのほどを。 

皆さんにとって新年が素晴らしいものになっていきますように……。

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嶋田智之【tomoyuki.shimada】
エンスー自動車雑誌『Tipo』の編集長やスーパーカー専門誌『ROSSO』の総編集長を務めた後、フリーランスとして独立。「クルマ」と「ヒト」を仕事の柱として、モノ書き/編集者として活躍中。カーくるではお馴染みのイベント「ミラフィオーリ」「トリコローレ」などでゲストMCを務め、親しみのあるざっくばらんな語り口調の「居酒屋系自動車トーク」が人気。
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