前回のブログ【もし世界の車が100台だったら】という資料のアイディアの元になったと思われる、「世界がもし100人の村だったら」という文章をご存知でしょうか・・?
(5年程前にネットやテレビでもよく取り上げられていましたね。)
内容をイメージしやすいように、その文章を動画にしたものもいくつかあるようです。
色々な物事に対する見方を、自分の固定観念から解きほぐしてくれる、とても興味深い内容だと思います。
この文章の内容は興味深く、色々な発見ができますが、
この文章の元となるものが発表され、変化しながら伝わっていく過程も
興味深いのでご紹介したいと思います。
元々は、1990年にアメリカのイリノイ州出身の大学教授(環境科学)であるドネラ・メドウス氏 (Donella Meadows) が発表した「村の現状報告」(State of the Village Report)と題した文章が発端でした。
それは「もし世界が1000人の村だとしたら」という文章でした。
かなり細かい統計値も含んでおり、それでいて啓発を促すような文は含まれておらず、「客観的な資料」としての側面が強い内容です。
1000人ではイメージが湧きにくかったのか、どこかのどなたか(一説によるとアメリカのとある高校の先生)が内容の一部は省略した上で文章を100人に置き換え、さらに段々と後半に啓発や自制を促すような長い文章が追加された上で、チェーンメールとして広まったようです。
その英文のメールを、2001年3月に当時世界銀行に勤務していた中野裕弓(なかのひろみ)さんという方が、「もしも世界が100人の村ならば」として和訳されました。
するとそれが日本でも話題となり、本として出版されたり、その内容を発展させてTV特別番組になったりしたようです。
(ただし、さすがに20年以上前の文章が元になっているので現在とは異なってきている内容もあるようで、2002年頃?に統計値修正版を書かれた方もいらっしゃいます。
それによると「コンピューターを持っている人は100人のうち4人」{原文では1人}となっていたり、項目によっては数値はかなり変化しているようです。)
そういった数値的な変化はさておき、オリジナル版(1000人版) と 普及版(100人版) をくらべると、大きな変化があるように思います。
元々は客観的な資料であったものが、主観的な見方で省略されているということです。
例えば、
「300人がキリスト教徒(183人がカトリック、84人がプロテスタント、33人が正教会)・175人がイスラム教徒・128人がヒンドゥー教徒・55人が仏教徒・47人がアニミスト・210人が残りの宗教(無神論者を含む)」
という文章は
「70人がキリスト教徒以外の人たちで、30人がキリスト教徒」に置き換わっています。
原文には無かった「80人が有色人・20人が白人」という文も付け加えられています。
恐らく、この普及版(100人版)を作成した方は、白人でキリスト教徒なのではないでしょうか・・?
そして、それ以外の各々の項目に於いても、その方に当てあはまる要素が「恵まれたもの・優れたもの」だと見なした上で啓発しているような文章が後に続きます。
それに対しては、「いわゆる南北問題が自己肯定に矮小化されている」とか「自己中心的な価値観の押しつけ」であるという厳しい意見もあります。
この普及版(100人版)は、固定観念からの脱却や相互理解の大切さを説いているようでいて、この文章の成り立ちはむしろそれに矛盾しているのではないか、という意見もあるようです。
・・・と、いうことで・・・
100人が暮らす村と、1000人が暮らす村の両方を思い描けるように、
気をつけたいと思いました。(^^;ゞ G.Sekido